日向の読書手帳

毎日好きな本について紹介してます。

No7:「密やかな結晶」

 

こんばんは。

 

ヒナタです。

 

 

今日は京都から名古屋を経由して

東京にバスで向かってます。

 

私、バスって苦手だったんですけど

最近の就活でお世話になって

今では何の苦痛も無くやってます。

 

 

そこで、

移動中に一気読みした本があるので

今日はそちらを紹介したいと思います。

 

 

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No.7:「密やかな結晶」

 

 

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記憶狩りによって消滅が

静かにすすむ島の生活。

人は何をなくしたのかさえ

思い出せない。

 

何かをなくした小説ばかり書いているわたしも、

言葉を、自分自身を確実に失っていった。

 

有機物であることの人間の哀しみを

澄んだまなざしで見つめ、

現代の消滅、空無への願望を、

美しく危険な状況の中で描く傑作長編。

 

 

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小川洋子さんの「密やかな結晶」です。

 

私は読んでいる間

はっきりとしない不安を感じていました。

 

 

次は何が消えてしまうのか、

消えた先はどうなるのか、

「わたし」はどうなるのか。

 

ですが、

読み進めていくうちに

不安であっても

種類の違う、

諦めを含めたものに変わっていきました。

 

 

この本の中では

「わたし」の書いた、

声を失った彼女とタイピストの恋人の小説と

同時並行に進んでいきます。

 

その内容が進むにつれて、

現実で起こっていることとの対比となり、

「わたし」の心の衰弱を感じます。

 

 

そして、

「わたし」の語りでも

徐々に何かが失われていること、

彼女自身は失われていることに気づかないことが

哀しく描かれています。

 

 

「思い出せない」と言えるうちは

まだ記憶に形を留めています。

「思い出せないことを思い出せない」ということが

本当の意味での記憶からの喪失だと思います。

 

私たちはきっとまだ

前者が多いと思います。

それ故に、

この物語に不安感を覚えるのだと思います。

 

「思い出せないことを思い出せない」

それはとても悲しいことだと思います。

 

 

すごく色々なことを考えされられる物語でした。

細部まで美しい文章で、

日常の中に慈しみを感じられるものでした。

 

 

恋の話でもあり、

小説家の話でもある。

 

また、

自分についても考えさせられる

すごく素敵な小説なので、

多くの人に読んでもらいたいです。